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荒野の叫び 2009年03月の記事

松下政経塾卒塾式で述べたこと

2009.03.17

 先日、松下政経塾の卒塾式に出席をし、懇親会において、関理事長、海老根藤沢市長についで祝辞を述べる機会を得た。
 今日の日本の危機的状況と其の克服について最近感じていることを述べたが、改めて自戒の念をこめてここに荒野の叫びとして記したい。
 先般、裏千家淡交会の新年初釜においてある著名な人から次のような挨拶があった。いわく、其の方の自宅に日本を代表する自動車企業の元社長が新年に訪問をした。彼は、世界的なリーディングカンパニーの社長であったが、昨今の世界的不況の中で史上初の減益を計上し、肩を落として彼の家を訪問した。しかし彼が二時間の訪問を終えて帰宅するときに極めて元気になっていたというのである。その理由の一つは、タイミングを見計らって、茶道の作法に則ってお茶を出した。この茶の湯と言うのは、そもそも戦国武将に親しまれたもので、真剣勝負の世界における、ひと時の自省の時間を提供するものであった。したがって、其のことで、新しい勇気も湧いてきたのであろう。
 しかしそれ以上に重要なことは、彼が話した内容である。つまり、終戦直後、日本が戦争に敗れ、彼が復員してきたときには、祖国は見るも無残な状態で、国土は灰塵に帰していた。其のときの苦労に比べれば、今日の不況は苦労のうちに入らない。がんばれと言う趣旨のようであった。
 私は、其の話はなるほどそうであろうと納得したが、一つ引っかかるところがあった。
 つまり、戦争直後においては、確かに物資は不足し、社会は混乱し、建物は廃墟になっていたかもしれない。しかし、精神は混乱をしていても、そこには、戦争で死んでいった友人に代わって、日本を再建しなければならないという強い使命感があった。
 私はそこで、今日の青年の意識調査を述べた。特に中学生レベルにおいて、最近の意識調査によると、アメリカや中国の中学生の15%が自分自身に自信がないと答えているのに対して、日本では自信の無い中学生が70%を超えると言う。そして同じように、無気力さを表される数字も調査に現れた。これは、日本における最大の危機であると述べた。
 かつてプラトンが、国家は大文字の個人だと言った。この箴言は今も正しいと考える。国家としての日本に自信が無いから、そこに住む国民にも自信が無いし、自信がない国民が集まっているから日本も自信がないのかもしれない。私はあたかも、卵と鶏のようなこの「自信が無い」の相関性を打ち破らない限り、戦後の日本の困難な状況から日本を脱却させた強い国民は生まれないと述べた。そして其の要諦は自国の歴史に自信を持ち、歴史を大事にすることだと考えた。
 ペリクレスは、アテナイの国民にして、自分の家のことと同じように、アテナイのことを心配しない市民はアテナイの市民の名前に値しないと言っている。
 国家に対する一体感は、民主主義における、多数決原理と同様に、極めて重要な精神的情熱であり、それが無ければ、単に多数決の民主主義は、意味を持たないと言うことをペリクレスは主張したのである。
 そして彼は、アテナイの国政やアテナイの歴史に対する愛情が其の民主主義を正当に機能させる上での、最も重要な要件出ることを主張したのである。
 まさにそうした思いがあったからこそアテナイを中心とするギリシャ同盟は、と当時の世界最大の強国であったペルシャの侵略を阻止することが出来たのである。
 翻って、今日の日本において、歴史に対する愛情はあるであろうか。自国の歴史を大切にしているであろうか。私は、自国の歴史を大事にし、大切にすることこそ、こうした経済の危機のときの精神的支えになると考える。
 いまだに硫黄島には多くの日本兵の遺骨が残されたままで其のすべての収集には今のペースで300年かかると言う。アメリカは戦後5年もしないうちにすべての米兵の遺骨を収集しアーリントンの墓地に手厚く葬っている。この違いは、決定的である。もし我々が自国の歴史を大切にしようとするならば、即刻こうした戦後、野ざらしにされている英霊に対しても行動を起こし、その御霊に礼を捧げるべきである。
 私は、そうした国家として基本的なことを戦後ないがしろにしてきたことを鑑みるに、わが国家は歴史を大切にしていない。
このことこそ、こうした国家の危機に対して他の国家が強い対処の情熱を持つのに対して、われわれ日本人が不足している部分であろう。
 裏千家の初釜でその方がおっしゃったことは事実であるが、それを乗り越える精神的国民の強さをよみがえらせるために国家は、当然の人道上の行動を起こすべきであると私は述べた。

ここに中学時代のテキストが入ります。
ここに高校時代のテキストが入ります。
ここに大学時代のテキストが入ります。
ここに松下政経塾時代のテキストが入ります。