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荒野の叫び 2010年07月の記事

デフレ脱却議連 野田財務大臣に申し入れ

2010.07.31

「デフレ脱却・経済成長プログラム」

平成22年7月30日

デフレ脱却議員連盟

1 現状認識
 1990年代以降のいわゆる「失われた20年」の間、わが国の経済は、欧米先進国経済の堅調な推移、中国をはじめとするアジア各国の大幅な成長とは対照的に低迷を続けた。金融政策の失策により先進国中で唯一デフレに見舞われていることがその原因である。GDPデフレーターは90年代半ば以降原則としてマイナスを続け、企業業績の悪化、失業率の上昇、賃金の下落、経済的事由による自殺の増加など国民生活に大きなしわ寄せが生じている。

 さらに、わが国は2008年9月のリーマンショック以降、金融危機の震源地である米国をはるかにしのぐ生産出荷の下落にみまわれた。現在は、輸出中心の景気回復をたどっているものの、その基盤ははなはだ不安定であり、ギリシャ危機に端を発した通貨不安、米国、中国などの経済動向などに左右される。かかる状況から脱却するには、デフレから脱却して内需を拡大する必要がある。そのためには積極的な金融緩和政策の策定と実行が不可欠である。

 ところが、現在の日銀の金融政策からは、本気でこの未曽有の経済状況を克服しようとする思いが伝わってこない。そして、円高、株安など日本企業を取り巻く厳しい経済状況からの脱却は、今後の財政規律を考える上でも喫緊の課題である。

 また、今回の参議院選の敗北の要因の一つは、わが党がデフレ脱却の具体的政策を前面に押し出すことなく、議論のスタートを財政規律即ち増税論議に持ち込んでしまったことにある。

 そこで、われわれ「デフレから脱却し景気回復を目指す議員連盟(略称:デフレ脱却議連)」は、税金の無駄使い削減、諸々の成長戦略の実施と同時並行で、参議院選挙でのマニフェストにあるようにリフレ政策を通じて景気回復を実現するために以下の提案を行う。

2 プログラム内容
 「デフレ脱却は、『強い経済、強い財政、強い社会保障』づくりの前提条件であり、そのためにはインフレターゲット政策などのリフレ政策が必須である。」

? 政府内に経済政策の司令塔を設置
・経済成長と景気対策を担当する省庁がなく、各省庁の縦割りになっていることへの対応が急務。

・本来、国家戦略局もしくは内閣官房が担当すべきだが、あるいは日本版CEA(大統領経済諮問会議)を設置する必要がある。そこに金融や経済の専門家とあわせて日銀総裁をオブザーバー等として参加させ、政府と日銀の意思疎通の場とする。

・政府は毎年、年末の予算編成にあわせて次年度の物価上昇目標(消費者物価指数プラス2%からプラス3%の間)を決定・公表し、日銀に通達する。その際、目標の上下1%以内に維持することを課す。

・1997年の消費税引き上げ、2000年のゼロ金利解除、2006年の量的緩和解除などの過去の早すぎた引き締めの失敗に鑑み、雇用の需給の逼迫がみられるまではデフレからの脱却が達成できていないととらえ、緩和的政策をとり続ける必要がある。財政政策についても、厳しい財政事情という制限はあるものの、景気が回復軌道に乗るまでに限っては可能な限り活用する。

・なお、日銀の国債直接引き受けについては、「財政法第五条」、「日銀法第三十四条」により国会の議決を経れば現行法の下でただちに可能であることに留意する必要がある。

? 金融政策:インフレターゲット政策の実施
・インフレターゲット政策は、世界でも標準的となっている金融政策の手法であり、EU圏以外のヨーロッパ、オセアニア、カナダ、ラテンアメリカなどで広く採用されている。わが国では中央銀行のガバナンス向上のための手法としても有用である。これをただちに導入し、政府が決定する物価上昇率目標を日銀が達成できなかった場合に説明責任を課す。

・低すぎる物価目標は株安・円高・デフレからの脱却や財政再建につながらないため、その中心値は消費者物価指数で年率2%から3%とする。

・現在、オペの対象となっている短期国債ではなく、残存期間が長い、真の意味での長期国債の買い切りオペを中心におこなう必要がある。場合によっては、株式、REIT(不動産投資信託証券)、中小企業を含む低格付けのCP・社債をも対象とすべきである。また、市中の金融機関の企業向けローン債権購入も検討すべきである。

? 日銀法改正など日銀のガバナンス向上の方策を実施
・改正日銀法が施行された1998年以降のデフレ・円高不況の原因は日銀による金融失政であるため、日銀法の改正にすみやかに着手する。

・日銀の自主性は維持しながら、金融システムの安定や「物価の安定」のみならずFRB同様に「雇用の最大化(失業の最小化)」も目標とする。なお、連合会長古賀伸明氏は本年4月6日、当議連での講演で「雇用の最大化を日銀の政策目的に入れるべきだ」と発言している。

・日銀のガバナンス向上のためのその他の方策をとる必要がある。これまでもともすれば国内の不況には反応しないものの、金融機関の窮状には即座に対応するなどの批判があったが、このような批判をぬぐい去るために意志決定の透明化を実現する。日銀総裁、副総裁、審議委員の選任についてはこれまでのやり方を変える必要がある。特に審議委員については、これまでの業界代表を指名していたやり方を改め、金融や経済の専門家を中心に指名し、活性化を図る。また、来年4月からの任期の審議委員2名の選定について当議連は重大な関心を持って注視していく。

・いわゆる「日銀の独立性」について、1998年施行の改正日銀法により「自主性」が付与されたことは事実である。しかし、日銀には、金融政策実施のための具体的方策の選択の自主性(法令で認められた部内の昇進などの人事をどうおこなうか、どの債券を買うかなど)はあるが、達成すべき物価水準などの政策目標については政府が設定をおこなうこととするのが、日銀の持つ自主性の範囲に関する正当な解釈である。

? 10年間で7割強の経済成長実現:経済成長の数値目標
・われわれのプログラムは、当面の不況から脱却するために経済を活性化することにより今後の成長戦略の成果を一層確実にするものである。

・政府は本年1−3月期でのGDPギャップを控えめにマイナス4.7%と見積もっている。これに、仮に物価上昇目標を年率2.5%とし、わが国の潜在成長率を、今後の成長戦略の成果を加えて実質2.5%として概算すると、平成23年度から3年間の景気回復期は、名目6.5%強、実質4.0%強程度で成長する。さらに平成26年度以降は潜在成長率で成長する。

⇒10年後の平成32(2020)年度終了時には名目で約70%強、実質で約1/3強わが国経済が成長。

・税収弾性値を1.1として計算すると、最終年度終了後には年間80兆円程度の税収となる。これは先日閣議決定された「財政運営戦略」において、国債の元利払いを除いた単年度の支出を借金なしでまかなう「基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化」に必要とされた歳入80.3兆円もしくは84兆円にほぼ匹敵する金額である。

? 経済が中長期的に潜在成長率に復帰した後に、強力に財政再建をおこなう。
・歳出削減による財政再建は、好景気下でないと国民に無用の痛みを強いる。本プログラムによる物価上昇率のプラス化は、国債発行残高の負担を実質的に飛躍的に減少させ、財政再建に大きな寄与をする。好景気に伴う国債価格下落(利回りの上昇)を期に、財政を引き締めつつ、金融緩和のためにも長期国債の買い切りオペを積極的に行うことが望ましい。

(参考)FRBのリーマンショックへの対応
・米国の中央銀行機能を担うFRBは、未曾有の金融危機である2008年9月のリーマンショックに対応するために、大恐慌時代以来封印されてきた連邦準備法第13条3項に基づき、本来FRBの管轄下にない証券会社への貸し出しをはじめとする非伝統的な金融政策を大胆に実施した。

・これは、政策金利の引下げによる伝統的な金融政策に加え、「信用緩和」(credit easing)と称して、市場の流動性や安定性を確保するためにリスクの高い各種資産の買取り等を実施するものであった。買い取り対象としては、中長期国債、中小企業発行のものを含むCP、住宅ローン担保証券(MBS)などがあげられ、それ以外の資産についても、相場下落の悪影響をこうむった機関投資家などの保有者に対する貸し出しプログラムが実施されるなどした。

・これらの非伝統的な金融政策の発動は、納税者負担を発生させる可能性があるため当初、議会からの強硬な反対を招いたが、急激な米国経済の落ち込みを防ぐことができた。

・各種資産の買取りにより、FRBのバランスシートは12月には危機前の2倍以上に急激にふくれあがった。(ちなみに、同期間では日銀はほぼ横ばい、ECBは約1.5倍、BOEは約3倍近くとなった。)このFRBのバランスシートの拡大は、一方で、ほとんどバランスシートを拡大しなかった日銀との比較で、当時1ドル110円近かった円レートが年末には90円台を大きく割り込む急激な円高ドル安のプレッシャーを生み、現在でもわが国の輸出の足かせとなっている。

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